山手線ゲーム テーマ:花の名前

いつかの飲みの席、元々4人ほどで飲む予定が私ともう1人の男の子以外皆遅刻になるとのことで、とりあえず先に2人で飲んでいた時の話、という感じのうそを言いますね。

 

その集まり自体久しぶりだということで実は正直行く前からなんか緊張してました。しかも、そのもう1人というのがこうして会うのは本当5年ぶり?くらいとのことで、5年なんてすごい歳月だから、さぞ話が盛り上がることだろうな、と思ったけれど、後から人が来た時に同じ話を何度もさせるのは申し訳ないな、とも思って初めは本当に当たり障りのない最近の話ばかりをして。
そうしているうちに30分ほど経ってまだ誰も来ず。目の前の彼は昔はそんなキャラでもなかったはずなんだけど、どうやらやたらと飲みたがりになっていて、2人で話してばっかもつまんないしなんかゲームして飲もうよ、なんていうもんで、私そういうのあんまりよくわかんないんだよね、と告げるとじゃあ1番簡単なゲームしよ、山手線ゲームとか!というので仕方なく2人でやり始めました。


言い出しっぺが負けるとはこのことなんですけど、国の名前、果物の名前、同じクラスだった人の名前、なんてものはすべて私の勝利でした。その度彼は大きめのビールジョッキを一気飲みしていったんで、なんだか申し訳なかったけどまだまだ!と言いながらヘラヘラ笑ってる。いたたまれなくなって、なんかあんたの得意なテーマはないの?と聞くとえ〜っとね、と考えるうちに一言、じゃあ花の名前はどう?と言ったんで、へぇ珍しいねそれやろうよ、と言って始まった山手線ゲームで私は彼に初めて負けました。
私が言ったのはせいぜいバラ、たんぽぽ、かすみ草、ぐらいのものだったんですけど、彼が言ったのは珍しいカタカナの名前ばかり、カーネーションとかスターチス、ベゴニア、アネモネだったか。

気になって、詳しいの?としっかり一気飲みした後に聞くと、彼はまあね、と言って飲む。その時やっと参加者であり今回の飲み会の主催者である友人がごめんごめんと言って合流した。
ひとまず乾杯したわりにビールを飲まずにで?と、彼に向かって彼女が聞くので、私がぽかんとしていると、あれ、てっきりこの時間で聞いてるもんだと思ったよ、なんて言うので何のことやら説明してよ、と私は聞いた。ここからはとっくに出来上がった彼が、ずっと我慢していたものを吐き出すように言ったこと。

 

いやさ、1年前くらいまで付き合ってた子がつい最近結婚したっていうのをFacebookで見ちゃって。もう未練ないと思ってたけど昔のこと思い出してマジでやるせないなぁと思っただけで。

 

そーなんだってさー。私もそれたまたま聞いちゃってさ〜そりゃ飲まなきゃでしょって言って、でも2人で飲むなんてなんか空気しんどいじゃん?で、共通の友達で近くにいるのって中々居なくてさ、久しぶりだし皆で飲もっかーってなって。さ、続けてどうぞ。と彼女はいう。彼はそのまま喋り出す。

 

えーっと、そうそう、大学から付き合ってたんだけどその子就活失敗したって言ってフリーターでアルバイト何個かしてたんだけど、それまで実家だったのが一人暮らしになったっていうから初めて家行った時にびっくりしたのが部屋に観葉植物とか、とにかく沢山花やらがあんの。ドライフラワー?とか。
こんな花好きだっけ、って聞いたらバイト先で帰りにいつも貰うからって。へー花屋でもバイトしてんだ、じゃあ花詳しいの?って聞いたら、彼女はうーんと困った顔をして、まだ全然わかんないけど、辞典買ったからって分厚い本出してくれた。そうしてるうちに他のバイト行かなきゃって彼女は家を出た。
彼女はほとんど夜はバイトで家に居なくて、俺はそのまま家居ていいからって言われてそれが段々普通になった。
彼女は深夜には帰ってきてくれるけど、それまでの時間俺は何するでもなくテレビ見たりして。でも毎日1人でそうしてるのも飽きてきてて。まだ鍵預けられてないから一旦入ったら出れないし。そんな時、ワンルームの家には多すぎるだろってくらいの草やら花やらがまた気になりはじめてしょうがなかった。
しかも彼女が最近世話きちんと出来てないんだよねって言ってたんだ。そこで、別に直々に頼まれたりしたわけじゃないけど、それからは俺が代わりに毎日毎日、花瓶の水替えたりたりしてた。やってるうちに愛情もこもってくるもんだよな。上手く育ったら喜んでくれるかなーとか。分厚い辞典でその花の名前も調べたり。
彼女が花持って帰ってくるのもなんか楽しみになってきて、花瓶も買って行ったりしたり。


つって、あんまり長くなるのもアレだから簡潔にいうと、彼女花屋でバイトなんかしてなくて、水商売してた。んで、ずっとおんなじ奴から、花とか、貰ってたらしいんだ。今となっちゃ別にどうでもいいけどね。でも結局そいつと結婚したんだってウケるよな。もうそんなバイトしなくていいようにしてあげたいって、ずっと言われてたらしいんだ。なんつーか大人大人。大人か?いや大人だな。

だってその時の俺はそんなこと気がつきもしなかった。ただある時、花の辞典見てる時に気がついたんだ。家にあった全部の花の花言葉がスゲーの。愛のめばえとか、気持ちに気づいてとか、真実の愛とか。
最初舞い上がったよ。俺のことかなって。でもなんでもっと早く気がつかなかったかな、余って持って帰ってくるわりには綺麗に包んであるのをあえてクシャっとさせた感じだったし、でもたまーにしわくちゃのリボンとかシールが部屋の中に落ちてたりすんの。指摘したらリボン結ぶの下手で練習してるんだって、まぁウソだったんだろうけど。


で、結局なんで別れたかって、そもそも帰りが遅くて、最後の方なんていっつも酒臭くてさすがに感づいたんだ。気づいちゃったらやっぱり、なんかちょっと嫌だったから言おう言おうと思ってよし今日!と思って彼女の家に行った日。その日玄関入った瞬間、彼女がはいって俺に花を渡してくれたんだ。いつもと違って、綺麗にリボン結んであった。え?って驚くと今日バイト入れてないからって。なんで?って、思いも寄らなくてびっくりして何も言えなかった。けど、彼女は今ご飯作ってるからって言って台所に戻ったけどすぐごめん、ちょっとスーパー行ってくるといって外に出ていってしまった。

 

こっからは超女々しくて申し訳ないけど、いつもの癖で調べたんだよな、彼女がくれた花はダリアなんだけど、ネットで調べてすぐ目に飛び込んで来た花言葉は裏切りだとか移り気だって。意識してないにしてもなんか超ウケたよな。あーなんか伝えたいのかなって。他に好きな人できたってこと。いやどんどけネガティヴだよって話だろ。
でも1番何がウケるって、後で気づいたことにはほんとはその日俺らが付き合った記念日で、彼女は実はいつもの感謝の気持ちでくれたんだって、その花。
でもなんかその時俺はたまんなくてそのまま外出ちゃったんだ。
その後何回も何回も彼女から電話が来たけどなんかもうどうでもよくなって。
でもやっぱり気になって、その後共通の友達に聞いたらもうあの子彼氏居るからって。そういうわけ。そういう、そういう。


そこまで聞いて、ようやくもう1人がごめん仕事終わるの遅くて!と合流した時には彼はもうべろんべろんで、これまで何の話してたのってその子がどれだけ聞いても彼はもう話すことも難しそうだった。

結局その日は夜も遅いしもうみんな飲めない、となってしまってゆるやかに解散

最後に彼が、俺らは結婚遅そうだなぁなんて笑った。一緒にすんなバカ、といった主催者の女の子。

ふたりはあの後付き合ったそうだ、と、 風の噂で最近聞いた。

 

 

それでも花屋でダリアを見ると、時々この話を思い出すことがあるよ。

 

ダリアの花言葉:華麗 優雅 感謝 裏切り 移り気