静岡で落語 前

ある日テレビを観ていたら笑点特集をしていた。

落語を好きになり始めたのはここ最近のことでこの人の噺はいいな、と初めて思ったのは5代目三遊亭圓楽師匠(笑点司会としては4代目)。

ふだん過ごしていて常々思うのは、好きなものはぜひとも生でみたいということでそれは落語についても同じくだったが、寄席を探した時に初めて、圓楽師匠はすでにこの世にいないのだと気づく。この話はそれくらい最近のこと。

 

テレビの話に戻ると、メインは歌丸師匠の話で、その頃から歌丸師匠は身体の調子がもうギリギリのところじゃないか、という感じでそれこそ6代目円楽師匠の毒舌についても正直このまま笑っていていいのかしら、と余計なお世話なりに思ってしまうほど。(ご本人としては、そのままやればいいとのお話だったが)

その時ふと、5代目圓楽師匠の件を思い出したので横目でテレビを見ながら、手は歌丸師匠が出演される直近のイベントを探していた。

 

近場でいえば大阪・森ノ宮で毎年行われる東西特選落語会があったが人気なようで既にチケットは売り切れ。しかし今行かねば、と思う気持ちは止まらず予約したのは静岡・浜松で行われる東西名人会だった。

予約ボタンを押した瞬間からわくわくが止まらず、その日から毎晩寝る前に師匠の落語をききまくる。

 

さていよいよ出発日、翌日もお休みだったが日帰りとして、夜行バスで行き、翌日の朝に着く。行きの到着地点は沼津港。

計画としては朝ごはんを港の海鮮丼として、お昼は富士山の見える温泉に入浴しつつ、その後開演までの時間をどう潰すか考えよう、というもの。

  

沼津港の周りをうろつき、良さそうなお店に入って、早速丼を頼む。朝から食べる海鮮丼はひじょうに贅沢な気持ちにさせてくれた。

その日は確か水曜だったので、私以外にお客さんは誰もおらず。

GWが終わった翌週くらいだったので、お店の人ものんびりと構えてらっしゃったのがなんだかとても心地よい。

 

深海水族館にも興味があったが今回はやめ、そのまま港を後にし向かった先は御殿場。目的地はいよいよ富士山が見える日帰り温泉

下調べしていた情報によると駅からシャトルバスがあるとのことで駅からバス停に向かって歩く。そのまま待つこと15分ほど。

 

さてアウトレット行きのバスは何度も来るが、希望するバスは一向に現れず。

嫌な予感がしたので駅員さんに聞いてみると、土日のみの営業とのことだった。

タクシーであればすぐ着くとのことだったので、行き先を告げて乗り込んだ。

 

乗り込んだタクシーのおっちゃんは気さくな雰囲気でわたしに向かって喋り出す。1人?どうしてこんなへんぴなところへ?はぁ落語を聞きに、風流だねぇ、などと言いながらのんびりのんびり車を走らせる。山道は他に車がなく、静かな道のなかラジオの音とおっちゃんの会話を聞きながら進んで行く。が、途中メーターの値を見ておや、と思いはじめる。

 

「あの、すぐ着くとのことだったんですが、あと何分くらいですかねぇ」

「うーんと、いまやっと半分くらいだねぇ」

 

確かにそこまで遠くない道のりだったが、その時点でメーターは1500円の表示。

 

イメージだともう着いてもいい頃なのでは、とも思いつつ、着いた時には結局その2倍ほどの料金。ケチくさい気持ちになりたくないしこれが静岡の「すぐ着く」なのだと考える。申し訳なさそうになんかごめんねというお顔のおっちゃんには余裕です!と笑ってみせて温泉に入る。

 

(ちなみにくもりで富士山は見えず。

ありがとうございました。)

 

さて余裕ですね、と抜かした割に帰りも同じくタクシーで帰るとなるとうーん困ったなぁと思いながら、風呂から上がると畳が敷かれた大きな休憩室に私だけ。ということは独り占め。だらだらしていたらいつの間にか2時間ほど寝てしまう。その時点で午後3時くらい。すっきりしてフロントに行くと、えっお客さん何処にいたの休憩室で寝てた?もう誰もいないかと思ったら降りて来たからびっくりしたよ、ところでここへはどうやって来たの、と矢継ぎ早に言われたのでえっとタクシーで、と言うとええ、高かったでしょ!といわれ、あっやっぱり高かったんだ、と笑う。

 

帰りもタクシー乗ってくの、と聞かれあはは、歩いていけそうだったら下りだし歩こうかなぁ、と言ったらそれは...とのお顔をされたので、無理かと思った矢先に奥から別のおっちゃんが登場。一言、

 

「乗ってくかい?」と。

 

思わず抱きつきそうになったな、あのトトロみたいなふかふかしたお腹のおっちゃん。

というわけで御殿場駅までぴゅっと乗せてもらった。道中気をつけるんだよと言われお礼を言って、そのまま電車に乗りスムーズに降り。浜松まで乗り継ぎの電車をホームで待つ間、ようやく来た目的を思い出して落語に心と耳を貸した。

 

落語はものにもよるがひとつの噺で大体20〜30分ほどある。目の前を通る電車を見送りながら噺をきいているとようやく、これから生の落語をききにいくのだな、と思いにやにやしてきた。そうすると夢中になって乗るはずの電車も一緒に見送る。一回休み。約20分のロスタイム。

結局浜松に戻って来たのは開演10分前とぎりぎりの時間で、入って自分の座席を確認すると二階席の真ん中右端くらい。

 

会場に入って驚いたのは、今日、ほんとうに平日だよな?と思うくらいの満席。指定席は父親ほどの年齢のサラリーマンと、ご夫婦の間。

思わずきょろきょろと見渡すと、おしゃれしたおじいちゃんおばあちゃんがうれしそう。皆今か今かと開演をまちわびている。

 

この時点で既に、心にジンときたものだった。

 

 

 

(後半につづきます)

(といいつつ、まとまらないので気が向いた時にしれっとあげます )